君を探して
「ねぇ、聞いて聞いて! 深月ってばモテるんだよー」

チョコは早速、陽人たちにさっきの話を報告している。

「へぇー、告白でもされたの?」

陽人の横で笑っているのは、ヤマタロ。

陽人とヤマタロは中学のときから同じ陸上部に所属していて、仲がいい。


ヤマタロの本名は、山野上恭太郎。
ヤマノウエキョウタロウって長いから、略してヤマタロ。

山田太郎ではない。


ヤマタロは、穏やかで飄々としていて、陽人みたいに「体育会系!」って感じが全くしない。

色白で整った顔立ちが、ヤマタロをクールで冷たい印象に見せているけれど、話をすれば気さくないいヤツだって分かる。

特定の彼女はいないみたいだけど、かっこいいしスポーツ万能だし、女の子にはかなりもてるから、彼女がいなくても寂しくないみたい。

そんなものなのかな? と思うけどね。


ちなみに、高校に入って陽人とチョコが付き合い始めてからは、私たちは4人で一緒にいる時間が増えて、周囲からは『仲良し4人組』なんて呼ばれていた。


「へぇー。この学校に、慎以外にも物好きがいたんだ?」

そんなヤマタロは、優しいんだけど、チョコに負けじと口が悪い。


「そうだよ、深月。慎くんがいるんだから『彼氏がいます、ごめんなさい』ですませればいいじゃん」

「そうなんだけどさ……。でも、ちょっと楽しみたいかなぁと思って」

煮え切らない私にイラっとしたのか、チョコが私に顔を近づけて、男2人に聞こえないように小声で言った。

「深月がそんなだから、慎くんとヤバいことになっちゃうんだよ!」

うっ……。
チョコに痛いところをつかれて言葉に詰まる。


そう。
私は最近彼氏とうまくいっていない。
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