君を探して
そのとき、始業のチャイムがなった。

またあとでね、と言ってチョコが自分の席に戻り、続いて陽人とヤマタロも。
私たちは散り散りになった。


私が席に着くと、隣の席のヤツが声をかけてくる。

「お、お、お、はよう」

あぁ……今朝もやっぱりキョドってるわ。

彼の名前は東雲(しののめ)。苗字しか知らない。

この男、実はかなりのオタク君だ。
確認しただけでも携帯電話3台と小さなパソコンを持っていて、授業時間以外はずーっとそれらを触っている。

でも、オタクっていっても見た目は本当に普通。

細身で、まぁまぁ整った顔立ちをしている。

何を血迷ったのかカラコンなんて入れたりしてるし。

だから黙っていれば誰もオタクだなんて思わないのに……


でも、話をすると、やはりかなり怪しげだ。

「おはよー、東雲」

私が声をかけると、何度も何度も小さくうなずく。
これは結構喜んでいるときの反応……のようだ。

でも決してこっちに視線を向けることはない。
本人曰く、人の目を見て話すのは恥ずかしいんだって。

東雲と隣の席になって1ヶ月。

毎日挨拶しているのに、まだ私との会話に慣れないみたい。

早く慣れてくれないと、次の席替えで席が離れちゃうぞー!


……実は私、今朝のメールは東雲からじゃないかと疑っていた。

なんか、東雲ってそういうことやりそうだし。

メアドも教えた気がするし。

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