君を探して
「慎くんはクラスも違うし、私たちとは距離があるから、疑ったり不安になってたんだろうね」

「うん、そうだね……」

そうだね……

私は、陽人みたいに、慎に自分の気持ちを伝えてなかったのかも。

慎は、私の気持ちも、陽人やヤマタロとの関係も、すべて分かってくれているって安心しきっていて……


その時。

「朝っぱらから語り合ってるなー」

背後から、ヤマタロの声。

さっきまで陸上部の自主練に出ていたようで、息が上がっている。

「おはよーヤマタロ!」

チョコの言葉に、ヤマタロは陽人の方を見ながら、

「昨日はお世話いたしました」

なんて冗談ぽく言う。

「そうみたいだねー。いろいろ、ありがとね」

チョコはヤマタロの皮肉をさらっと返してのけた。

なんだかもう、陽人とチョコは夫婦みたいだ……。


「深月、昨日はお疲れさん」

ヤマタロが私に話しかけてきた。

「ううん、こっちこそ、いろいろありがとうね」

「……で、あの後、急いでたみたいだけど何の用事があったの?」

ヤマタロが聞かれたくないことを聞いてきた。

出来れば忘れて欲しかったのに……。


「んっ? 深月、昨日他にも何かあったの?」

チョコも、聞き逃してくれなかったみたいだね……。

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