君を探して
「いやいや、たいしたことじゃないんだよ! 見たいドラマがあっただけで」

誤魔化そうとしてみたけれど、私はどうも嘘をつくのが下手みたい。

しかも相手は私のことをよく知るチョコとヤマタロ……。

「怪しいなぁ……」
ってチョコが疑惑の目を私に向けると、

ヤマタロも
「ドラマなら、陽人の部屋で見ればよかったじゃん」
と目を細めてこっちを見る。


──やばい。

でも、今はまだ言えない!


頭の中で、なんとかうまくこの場を逃れる言葉はないかと考えていると、

「まぁ、言いたくないならいいけどな」

と、ヤマタロがあっさり話を切り上げた。

そして、

「それより、あれ……」

と、教室の後ろを指さす。

「あ!」

そこには、自分の席を奪われて居場所のない東雲が、うらめしそうにこちらを見て佇む姿があった。

「東雲!」

私が名前を呼ぶと、東雲が少し不機嫌な顔で目をそらす。

「来てたんならそういえばいいのにー。ほら、こっちにおいで!」

チョコは慌てず、東雲の椅子に座ったまま、そう言った。


……ふぅ。

なんとか、ピンチ脱出。

私は、チョコに「言いたいことはハッキリいわなきゃ!」って説教される東雲の影に隠れて、ホッと胸をなで下ろした。



< 82 / 308 >

この作品をシェア

pagetop