君を探して





それからほぼ1時間後……。






私は電車の中にいた。

帰りの電車は学生でほぼ満席だった。

まだサラリーマンの帰宅ラッシュには少し早い。

外はようやく暗くなり始めたばかりだ。

私の隣に座っているカップルが、私の方をチラチラ見ながら小声で

「なんかポテト臭いねー」
「俺も腹減ったー」

と笑っている。

悪かったわね。
私だってこんなもの、好きで持ってるわけじゃないんだから。


──でも、仕方ないじゃない。

お店で食べる暇がなかったんだから。


私の膝の上には、ファストフードで買ったポテトとジュースがあった。

あの後、店内に入った私は、店員の『いらっしゃいませ~』という声に引き寄せられて、思わず食欲もないのにポテトとジュースを買ってしまった。

見慣れた顔の店員は、テイクアウトかどうか聞かずに、トレイにポテトとジュースを乗せて渡してくれた。

きっと私のことを覚えているんだろう。

長時間お店に居座る要注意客として。

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