君を探して
でも、私たちの話はあっという間に終わった。

話を終えるのに、揚げたてのポテトが冷めるだけの短い時間さえ必要なくて。

話が終わると、手付かずのままのジュースとポテトをそのまま手にとって、私は逃げるように席を立ったのだ。





(今更だけど、テイクアウトにしてもらっておけばよかったな……)

ずっと握りっぱなしの紙コップは水気を吸ってすっかりコシがなくなっていた。

ジュースを一口飲むと、私の手の温もりと車内の暖房ですっかり氷がとけてしまっていて、思った以上においしくない。

おまけに、とっくに冷めて油がまわったポテトはしなびて全然おいしそうじゃないのに、匂いだけは強烈で、電車の中でその存在を強くアピールしている。

決まりが悪くて、車内から顔を背けて窓越しに外の景色を眺めると、そこには見慣れた風景が広がっていた。


あと少しで、駅に着く。

──早く帰りたい。

私はじっと目をつぶった。


まもなくして、遠くから、電車のブレーキ音が聞こえてきた。

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