君を探して
電車の扉が開くと、私は真っ先に飛び降りた。

片手にポテトとジュースを持ち、もう片方の手で定期を自動改札に通すと、その先はすぐ道路だ。


駅を出たところで、私は足を止めた。

それは、目の前に、ジャージのズボンのポケットに両手を突っ込んで、寒そうに突っ立っている陽人がいたから。

いつものジョギングではない。
陽人は明らかに私を待っていた。

「陽人……?」

私が声をかけると、陽人はあわてて屈伸を始めた。

どうやら私を待っていたことは、隠しておきたかったらしい。

……それならもうちょっとうまく立ち回って欲しいんだけど。

「遅いよ、いまさらそんなことしても」

私は手に持っていたポテトを陽人に差し出した。

「これあげる」

陽人は冷え切ったポテトをひとつ取り、口にした。

「まずいな、これ」

「でしょ? ジュースもあるけど?」

「いや、やめとく……」


……なんだか気まずい空気。

陽人の緊張が伝わってきた。
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