彼等の物語



 なんとか二限目には間に合い、今は疲労、さらにクーラーの心地よい冷気を含んだ風を受けた事による睡魔と激しい闘いを繰り広げつつ、机に突っ伏しながら国語の授業を受けている。
 俺の通っている高校はどうやら勉学に力を注いでいたらしく、休み明けだろうとなかろうと毎日きっちりとスケジュール通りに授業を行なっている。
 そんな学校とは全く、これっぽっちも知らずに入学した俺は、長期休み明けの日ぐらいは始業式だけやって帰らせろ!、と心で愚痴をこぼしている。しかしながら、そんな事を思いながらも授業を受けている自分は、我ながら真面目だと思う。
 そんな、自分で自分を褒めるなんて悲しい事をしている俺の背中をおそらく指でつつかれた。
 それに応えるべく、突っ伏していた体を起こし、体の方向を黒板から横に向け首を俺をつついた人物へと向ける。
「今日さ、なんで遅刻したんだ?、星夜」
「心に容赦なく突き刺さる言葉をありがとう。遅刻の理由は目覚ましをかけ間違えたんだよ」
 誰がどう見たって不機嫌としか認識のしようがない表情で、そいつに答える。
「まるで漫画の主人公じゃん」
 楽しそうに、嫌味ったらしい笑顔でそいつは言う。
 本気の一撃をお見舞いしてやろうかと思ったが、授業中にそんな事すると限りなく目立つので止めた。
 変わりに口を開く。
「俺にかまってるよりちゃんと勉強しろよ、鏡螺」
 羽鮫 鏡螺。これがそいつの名前。
 一応、このクラスでは一番仲の良い友達だ。意外とすんなりと、すぐに仲良くなれた。
 仲良くなれたのは理由がある。
 それは他の奴とは違う身体的特徴があるとゆう、共通点があったからだ。
 俺の場合は、蒼い右目。鏡螺の場合は紅い左目。
 この共通点があったおかげで、こいつとはどんな奴よりも早く仲良くなれた。
「手厳しいなー」
 そう言いながらも楽しそうに嫌味ったらしい笑顔を、絶えず俺に向けている。
 よし。休み時間に一発殴ろう。
 そう決めて、今度は体力を取り戻す為の眠りにつくべく、再び机に突っ伏した。
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