彼等の物語
 結果、鏡螺は校門の辺りで俺に追いついた。気付いたのは俺が下駄箱に居たぐらいだろう。
 俺達の教室は下駄箱から一番遠い、三階の端にある。なおかつクラス数が他の学校よりも多く、全10クラスあるため余計に遠い。
 などと高校の無駄な所を考えつつ、鏡螺の(何の意味のない)話を雑音と思い耳に通している。
「……つまり、俺は今日発売のラノベを買いに行きたいんだけど、俺はラノベが読みたいんじゃなくてそのラノベに付いてる点数が欲しい訳で、でも俺に足りない点数が二点なんだけど、二冊も買う余裕がなくて困ってるんだけど……星夜君、君も一冊買ってくれないか?」
「断る。理由としては俺はそのラノベは読んでない。しかも俺は一巻から買って読み進みたいから途中から買うなんて中途半端な事はしたくない。でも一番の問題は金がない」
 長々と雑音を発して俺には無理な頼みをしてきた鏡螺を、俺は一気にまくしたて軽く息を吸う。
「ケチだな」
「当たり前だ。親の保険金が残っていても、学生の一人暮らしは意外と辛いんだ。それに、手持ちに余裕がない」
 俺は今一人暮らし中だ。
 親はいつだったか、俺の小さい時に事故で二人とも亡くなった。
 中学2年ぐらいまでは、親戚の人の家に居候していたが、自立とゆう名目のもと親子三人で住んでいた家へと戻り一人暮らしを始めた。一軒家に俺は一人とゆうのは結構寂しいが、たまに鏡螺みたいな馬鹿な輩が泊まりに来るのでそれなりに楽しんでいる。
 かくゆう鏡螺も両親を亡くしている。
 一人暮らしではなく、親戚の子供のいない老夫婦に養子にとられ、そこに住んでいる。
「いいなー。俺も一人暮らししようかな?」
 かなり恵まれた環境にいるこいつはそんな馬鹿な事を言いやがる。
 だからこそ、俺は言ってやる。
「掃除、洗濯、料理。金の管理に一人暮らしに必要な資金が貯まってから同じ事を言え。馬鹿」
「バッサリ切り捨てるのな」
「これぐらい出来ないのなら、一人暮らしは一生無理だ」
< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop