彼等の物語
 そんな事を話していると、いつの間にやら駅前だ。
 やっぱり人と話すと時間が潰れるな、気の合う友達だと特に。
 だけどこの事は心の中にだけ留めておく。約一名調子にのる奴がいるから。
「星夜、あれ見ろよ」
 そう言い鏡螺は改札横の何かを指差す。
 鏡螺には聞こえない程度のため息を吐き、指を差している先を見る。
 そこに居るのは二度見したくなる程の美少女だった。黒髪に蒼い右目と黒い左目。
 俺と同じか?、それともカラーコンタクトをつけてるのか?
「あの人ってさ、天然なのかな?」
 言いたい事は分かる。生まれつきなのかって事だろ。それは俺も気になるが、はっきり言ってそれほど興味がない。
「どうだろな?多分カラーコンタクトだろ」
「そうかな?」
「そうだろ。そんな事より今日の晩飯の献立を考えないと」
 そう言い思考に移る。
 今日はちょっとさっぱりしたのが食いたいから、そうめんでいいか。いや、蕎麦もいいかも。迷うな……そうだ!鏡螺に聞いてみよう。
「鏡螺、そうめんと蕎麦ってどっちが良いと思う?」
 俺にとっては結構深刻な問題を鏡螺に振ると綺麗に無視しやがった。
 そんなに俺の怒りをかいたいのか?、この馬鹿は。今なら目だけで蟻くらいなら殺せそうだ。
「星夜、前」
 鏡螺が前を向いたままそう言う。仕方がないので俺はそれに従う。
「初めまして」
「……うわっ!」
 前を向くと改札横に居たはずの美少女が俺の目の前にいた。
 驚いたなんてもんじゃないぞ。心臓が一時停止した。ついでに寿命が縮んだかも。
「うっ!そんなに驚かなくても…」
「そう思うんだったら、せめて肩を叩いてくれませんか?いきなり前に来るってゆうのは心臓に悪いんで」
「そんな事より!お話しいいですか?」
 せめてもの反撃をすると美少女は悪びれる素振りを一切見せずそう言いやがった。
 お話し?ふっ…
「い…」
「良いですよ!こんな奴でいいんなら連れてってください!」
 俺を断ろうと言葉を発した瞬間、鏡螺がそれを遮り了承しやがった。
 これは一発だけじゃ気は収まらないな…せめて十発だ。
「ありがとう。でも、私は二人に来てほしいから君も来てね」
 なんで勝手に話が進んでんだ?俺の意思は尊重されないのか?
 この世に神は居ないな。
 居るのは悪魔だけだ。
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