彼等の物語


 ……一応………終わりか?
 はっきり言って、長い。一応ちゃんと聞いたけど眠気が今、登山で言う登頂部にさしかかってる。気を抜けば一瞬で眠りにおちる。これは断言出来る。
 隣に座る鏡螺を見ると俺より酷い有り様だ。完璧に死んでる、精神的に。いつもは煌めいている筈の目が全く光を灯ていない。さながらブラックホールだ。
「どうしたの?」
 鏡螺を凝視している俺を不審に思ったのか謎の美少女はそう問いかけてきた。
「あ、ああ。気にするな。それで、話は終わりか?」
 まさかあんたの話で隣の馬鹿が心的に死んでるとは言えず、返事を濁しこちらから質問した。ついでに鏡螺を足でこづいておいた。
「今日は、終わりかな」
 鏡螺の目に光が戻ったのを確認した後、それを見計らったように謎の美少女は言った。
「今日は?」
「そう。今日は」
 聞き間違いであってほしいと思いながら聞くと案の定聞き間違いではなかった。
「それじゃあ、また明日」
 にこやかにそう言い席を立って謎の美少女は出入口へと向かう。
「待て!あんた、名前は?」
 何回も謎の美少女と言うのに疲れたので、とゆうよりは何かと不便なので名前を聞く。
「リーリア」
 そう呟き謎の美少女、リーリアは駅前の雑踏の中に消えていった。
 そんな事より話をするだけして飲み物の代金は俺らもちなのかよ。
 そんな理不尽な事を思いながら盛大にため息を吐いた。隣を見ると今しがた覚醒したばかりなのか鏡螺が「あの人は?」とかなんとか言いながら首を右往左往させていた。
「……帰るぞ」
 席を立ち伝票を鏡螺の胸に押し付けてそう言い一目散に店を出た。
 鏡螺のあの様子じゃ話を殆んど覚えてないだろうな。後で要点だけ纏めて話すか。
 なんか今日は散々だな…
< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop