紅
「……っ!」
驚いて本を取り上げられた方を見ると、柳くんがいつもの涼しい顔をして私から取った本を本棚に戻した。
すると柳くんは此方を見て、私の頭をポンと軽く叩いた。
私はいきなりのそれにびっくりして、肩をびくっと上げてしまった。
柳くんは私の頭から手をのけると、フッと微笑んで図書室を出て行った。
突然すぎて、頭がついていかなかった。
何が起こったのか、よく分からなかった。
あ、本。
戻してもらっちゃった。
お礼、言い損ねちゃった。
ただ、心臓がバクバク煩かった。