バッチバチ!
2章「お弁当箱となぞなぞと。」
朝5時半。携帯のアラームが鳴る。
僕は携帯のアラームを止め少し伸びをして布団から出た。枕元にあったジャージに着替え洗面所で髪を少し手入れして玄関でシューズを履いた。玄関先で体をほぐす様にストレッチをして僕は走り始めた。

5月。まだ朝は少し肌寒い季節だった。道路を突きって僕は川沿いの道に入った。リズムカルに淡々と。
道で犬を散歩しているおじさんがいた。ここでは毎朝会う。軽くお辞儀をした。おじさんもニコっと笑って挨拶してくれた。犬も僕に吠えていた。

体が段々暖まってきた。少しずつスピードを速めた。どんどん速めてやがて上り坂に直面した。良し。僕は一気にスピードを上げ坂道ダッシュをした。距離およそ30メートル。
一気に吸い込んだ息をまた一気に吐き出すように坂を走った。
足音が乾いた空気で響き渡った。坂を上り終えた。息をハァハァさせながら今度は少しずつペースを落としまた来た道を走った。
帰り道は景色を眺める余裕があった。走り出しはまだ薄暗かったけどだんだん日が昇ってきた。今日も一日が始まるなー。そんなことを考えながら家に向かった。さらに、今日もこれで強くなったかな?とも思ったりした。強くなりたい。それが僕を朝から走り出させる火種だった。6年生のあの日以来毎日欠かさず(雨天中止)行ってきた。
                   
家に近づいた。玄関先に人が立っていた。乙女姉さんか。
「おはよう。今日もよくやるわね。」
と言って巾着袋を手渡してくれた。中身はお弁当箱だ。今日もありがとう。

「ふふ。それよりもこんなに朝早く起きて授業中寝たりなんかしてないわよね?」
ギクリ。僕は目線を逸らした。乙女姉さんはハーっと溜め息を漏らして、
「高校は義務教育じゃないから留年をお忘れなく。」
といって人指し指で僕の鼻の頭をツンと突いて自分の家に戻っていった。

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