神様は見ている
『ならば、あなたに救いの手を差し伸べましょう』
その声は続ける
『そこに、諭吉さんを置いてゆきなさい』
少女は涙をこらえながら必死に声を振り絞った
「諭吉……さん?」
聞いていたのか聞いていなかったのか、十字架からの声は
さらに続ける
『えっと諭吉さんって知ってる?あの歴史上の人物の、
今お金になっちゃった人、あの人置いていってほしいんだわー出来ればお金で』
少女は下を向いて
涙を拭き、勢い良く立ちあがった
「ありがとうございます。神様、私の罪を許して下さるのですね!」
『いや…だから、あ!もしかして諭吉さん無い?
あーじゃあ野口さんでもいいよ、英世さんね?分かる?』
少女は希望に満ち溢れた表情のまま教会の重い扉を勢い良く開けた
その顔は何にも邪魔されず自由に飛ぶ鳥の様に
『あーちょっと?ちょっと?』