シャープペンシル
その日の帰り道、車酔いが酷い私は歩いて帰ることにした。
だるいと感じる時はバスで帰るけど、
今日は嫌な事がありすぎて酔うのがイヤだった。

ヒンヤリした空気が気持ちよくて、
耳から聞こえてくる音楽のリズムに乗って、
横を追い抜いていく人たちを横目で見ながら歩いていると、
たまたま昨日降った雨でできた水たまりの水がはねて
お気に入りの服が汚れてしまった。
「もぅ!なんで今日はこうなの!?」
と1人で文句を言っていると、後ろから
「クスッ」と声がした。
驚いて振り向くと、そこには年齢が感じられない顔の
男の人が立っていた。
「ごめんごめん。そんなに怒ってるの見ると面白くて。」
笑顔が無邪気で思わずドキッとした。
「・・っ!だってお気に入りだったんだもん!」
恥かしくて年上であろうその人に敬語を使うのを
忘れて答えていた。
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