私の最低な元カレ
「えっとですね」
「はいはい」
私はゴホンと咳払いして、なぜかピーンと姿勢を伸ばして話し始める。
「体育祭で、天野君がまた倒れたんだ。それで、保健室に運ばれて……私、お昼休憩の時にどうしても気になって保健室に顔を出したの。
そしたら天野君が起きちゃって……。私、その時なんか天野君に心が揺らいでたんだ。すごく、揺らいじゃってた。」
「…うん」
「そんな自分が嫌で、すぐに保健室を出て行こうとした。
だけど、天野君に呼びとめられて……。天野君が言ったんだ。
“俺が藤原と別れた本当の理由を言えばまた付き合ってくれる?”って」
「…な、にそれ。どういう意味?」
「天野君、私と付き合ってる時にはもう、家の都合で引っ越すことがわかってたみたい。
だから私とは遠距離になる。遠距離は無理だって。
私が離れて行くのが怖いって思って、別れを言ったみたい。」
天野君は言った。
少し、悲しそうな声で。
あの時の同じ香水の匂いをちらつかせて。
「どうせなら、私に嫌われたほうが楽だって…思ったらしい」
だから私も、
信じてしまった。
また、やり直せるんじゃないかって思った。
だけど