左薬指にシルバーリングを





切なくて。
もう何も見えやしない。


視界がボヤけて、
彼女の手に俺の涙が落ちた。


すると、彼女は左手を俺に差し出す。
涙をボロボロと溢しながら、彼女は「つけて?」と顔で訴えた。



俺は握りしめていた左手の薬指にそっとシルバーリングを潜らせる。




「…よく似合ってる」



プロポーズを断られるたび、突き返されてきたシルバーリングがやっと結婚指輪らしく輝いた。





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