愛たい

『…だから、こうして手を繋げるなんて思ってなかったから幸せだな…』

そう言って優しく微笑む佐藤は、もっと綺麗に見えた。

そんな佐藤の小さな手を少し力を込めて握る。

…どんだけ、柔らかいんだよ。



急に俺の腕が後ろへと持ってかれた。

後ろを振り向くと佐藤が立ち止まって俺に微笑んでいた。

『ここ、私の家…』

そう言う佐藤のよこに並び、

「じゃあなっ」

と言い繋がれた手を離した。

その手を佐藤は少し悲しく見つめ、家の前の階段をゆっくり昇る。

「また明日!」

そう言い歩き出した俺を、

『待って!』

と佐藤が引き止めた。

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