愛たい
二十話 隣の彼女
少し俺より遅れて入ってきた陸と結衣を見れば、陸の顔にはもう怒りも悲しみもなく結衣の顔も少し綻んでいた。
やっぱりこれで良かったんだ、そう確信した。
「なあ。てか誰と付き合ってんの?」
何て陸は直球に聞いてきた。
ついさっきまで睨んでくせに、と思うと何だか笑える。
そんな俺らの様子を結衣は少し離れた自分の席から嬉しそうに見ている。
「佐藤深帆って子!」
と答えても陸はピンとしない様子だった。
「…誰?」
まあ、そう言われるのは予想してたし。
陸は面倒なことは嫌いだから人の名前もまともに覚えない。
多分、同じクラスの奴の名前どころか顔も覚えてないんじゃないかな。
とりあえず、昼休みに深帆のクラスを訪れることにした。