愛たい

「失礼しまーす…」

静かな保健に俺の声が響き渡る。

保健に入った途端、消毒液の独特な香りが鼻を刺す。

ふとグラウンドが目に入った。

グラウンドに居るのはウチらのクラスの奴ららしい。

あ、そう言えば今、体育の時間か。

いつもなら体育の授業があるとテンションが上がるのに今は何だかそんな気分じゃない。

俺はベッドに座り、グラウンドを眺めた。

一際、輝く姿に目が止まった。

ダルそうにしながらもカッコ良くこなす姿は、

陸だ。

今日は、バスケか。

俺は夢中になって陸を眺めた。

誰よりもダルそうにボールを突くのに熱心に動く誰よりも綺麗で上手い。

キャーーー!

陸が綺麗なフォームでシュートを決めた途端に黄色い声援が上がった。

それは保健室に居る俺からもうるさいほど聞こえる。

目を凝らせば黄色い声援を出した女子の中に、

結衣も居た。

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