愛たい

六話 悲しい事実


外から聞こえる甲高い声が頭に響く。

そんな声を聞きたくなくて布団を被った。

成長期の俺には、保健室の布団は小さく頭まで被ると足が出た。

だから体を丸め全身を布団にくるんだ。

布団を被るとやけに静かになり布団の中は俺だけの世界になった。

「……………」

急に、

ピピィーーー

と言う笛の音が俺の耳に届いた。

いつもは大きすぎるくらいの体育担当の杉原の声は今日は丁度良く聞こえる。

周りの奴らはいつもと変わらない不快な顔を浮かべているだろう。

『これでー、体育の授業をー、終わりにー、する!気をつけ!礼!』

と杉原の熱い号令に打って変わって、

『ありがとうごさいましたー』

と生徒のやる気の無い声が聞こえた。

キーンコーンカーンコーンと言う音に、もう授業が終わったのかと気づいた。

生徒の声が徐々に大きくなり静かだった保健室に女子の甲高い声と男子の低くて太い声が響き渡る。

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