愛たい

「………」

きっと、これは神が俺に諦めろと言っているのだろう。


『陸っ』

さっきまでは陸と結衣の声なんか聞こえなかったのに、いつの間にか聞こえるようになった二人の声。

結衣の甘い声が俺の耳に入った。

『結衣…』

と結衣の声を優しく唱える陸の声。

目に入るのは、

お互いの唇を重ね合う

結衣と陸の姿。

ズキン、ズキン

と俺の胸がいつもに増して悲鳴をあげる。


悔しかった。

誰から見ても恋人同士に見えるその光景は、

あまりにも綺麗で。

まるで映画のワーンシーンのような、

絵になる二人。

だけど俺の目に映る二人の姿は、

あまりにも残酷で。

信じたくない事実だった。

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