愛たい

「結衣は、もう帰れ。水は俺が持ってくる」

と陸も立ち上がった。

すると結衣は、

『わ、分かった!』

と慌ててスカートを翻し保健室から出ていった。

陸の行動を不思議に思うと目の前に水が差し出された。

「あ、ありがと」

と小さく呟いて水を受け取った。

「…ごめん」

静かな保健室に響く陸の切ない声。


陸は謝ってるのに何故かそんな気分になれなかった。

「…陸、悪い。今、そんな気分じゃない」

と言うと陸は申し訳なさそうに、

「そっか、じゃあな」

と格好良く手を振り保健室から去った。

< 54 / 165 >

この作品をシェア

pagetop