愛たい
気づくと、ゆっくり歩いていたはずの佐藤が、もう俺の前に居た。
と同時に俺の視界が真っ暗になった。
耳に伝わる吐息。
体に伝わる体温。
背中に回る短い腕。
佐藤に抱き締められている、そう気づくのに案外時間がかかった。
「………は?」
思わず漏れた声に佐藤が俺の背中から手を離した。
『え、ぇえっと、あ、ご、ごめんなさい!』
と思いの他に慌てる佐藤に思わず笑みが溢れた。
「はっ、佐藤って面白いな」
俺の突然の言葉に佐藤が不思議そうに首を傾げた。
「何か気づいたら居るし、隠れられてねーし、いきなり抱きつくし焦りすぎだし」
と今までの佐藤の行動を思い返すと佐藤は顔を赤くして顔を下に向けてしまった。