愛たい
何なんだよ、俺…。
やっぱり夏は嫌いだ。
暑いしダルいし酸素ねーし苦しいし、
何か知らないけど、こんな気持ちになるし…。
あ、そうだ顔を洗いに来たのに。
俺は重い腰を持ち上げて立ち上がった。
ふいに。
何て残酷なんだろう。
偶然と言うものは。
俺の目線の先には…、
結衣。
結衣が階段を一段ずつ降りる度にサラサラで柔らかそうな髪が舞い上がる。
駄目って分かってても見とれてしまう。
俺の視線に気づいた結衣は俺と目を合わせた。
やっぱり…、駄目だ。
結衣から目を逸らしたくても逸らせない。
『あ、ハル!こんなとこで何してんの?』
そう言いながら結衣が俺に走り寄った。
「あ、いや、顔洗いに水道に…」
結衣が近くて言葉が詰まる。
何でこんなにも結衣は無防備なんだろう。
『水道って向こうだよー?』
そう無邪気に笑う結衣から目を逸らし、
「うん、知ってる。じゃ、じゃあな!」
と言い走って水道に向かった。