シーラカンスの唄
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《朱香、土曜日暇か?》
あれから一週間。
あの日は結局時間が遅くなり、翔には謝りの連絡を入れて会うのを止めた。
…というか、本当は重樹に会ってしまったから、翔に会うのが少し怖かった。
もちろん、そんなことを言えるはずもない。
だけど、一度会うのをやめてしまうと仕事があるから、どうしても一週間経ってしまう。
それでもなんとなく、会えなかった。
〈土曜日?〉
《おう。》
〈大丈夫だよ。〉
《じゃ、9時くらいに迎え行くわ。》
〈……了解。〉
(………珍しい。)
いつも翔が朝から来ることなんてなくて、大抵昼過ぎ。
最近、朝からの待ち合わせなんてしたこともない。
《寝坊するなよ?》
〈翔もね。〉
《俺は大丈夫。》
〈どうかなぁ?〉
《任せろ。》
〈はいはい。〉
彼から動くのはほんとに珍しい。
(…でも、どこ行くんだろ?)
子どもみたいに、ちょっとはしゃいでしまう。
そのせいか、夜は思わずドキドキして、なかなか眠れなかった。