シーラカンスの唄
彼のメールは一呼吸空いて。
《まぁ…シーラカンスが唄なんか歌ってたら大事件になるから解ると思うよ。》
〈そんな事言って…どうせ歌うなんて思ってないくせに。〉
《当たり前。》
〈………バカ。〉
地球バカになんて聞くんじゃなかった。
理屈ばかりで夢がない。
《まぁ、いいや。じゃ俺は寝ます。》
〈……逃げる気?〉
《いや、明日、朝早いんで。》
〈ふうん…。〉
《じゃ、おやすみ。》
¨おやすみ¨と返すと、それっきり彼からメールは返ってこなかった。
彼とは、再会して2週間。
会社の帰りに、目の前に偶然現れた、私の1番会いたくなかった人。
だけど。
1度会ってしまえば、時間も忘れて話し込んでしまうくらい、1番会いたかった人。
ホントはずっと、どこかに居ないかと探していた人。
だから。
会ってはいけなかった…。
せっかく、今までしまい込んで忘れていたのに。
もう忘れられない。
こうなる事も解っていたから、再会後、連絡先も聞いたけど、連絡していなかったのに…
彼は不意に、何でもない挨拶メールを送ってきた。
それがキッカケになり、結局、毎日メールしている。