シーラカンスの唄
(……どうしよう。)
まだ連絡をとり始めて1週間。
だけど。
重樹に連絡すればするほど、気持ちは過去に戻っていく。
だから、連絡するのを止めなきゃ…と思っているのに、もうすでに、止められなくなっていた…。
しかも、それに気付いた頃には、もう手遅れだった…。
*
《朱香、次の休みは?》
〈ごめん、友達と約束があって。〉
《ふうん。》
〈ホントにごめん。〉
重樹と連絡をとり続けていくうちに、気付けば翔へ会えなくなっていた。
本当は約束なんてしていないのに、約束してるなんて嘘もついて。
会いたくないわけじゃない。
翔が嫌いなわけじゃない。
それなのに。
何故か会う気が起きなかった。
それどころか、¨重樹に悪い¨とさえ思ってしまう。
《…もしかして、何かあった?》
〈………え?〉
《俺、避けられてる?》
〈…そんなこと………。〉
勘が鋭い翔には隠し事なんて出来ない。
彼は、誰も気付かない私の強がりだっていつも見抜いてしまうし。
私が落ち込むタイミングも知っている。
時々、私の事を、私よりも知っているんじゃないか、とさえ思うくらいだった。
そんな彼が気付かないはずがない。