シーラカンスの唄
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《ね、朱香、次の土曜暇?》
翔とは連絡が取れなくなったというのに、重樹からは毎日連絡が届く。
昔、2日も3日も連絡が無かったのが嘘のよう。
〈空いてるけど…。〉
《じゃ、朝迎えに行くよ。》
一瞬、見間違いかと思った。
《出掛けよ。車出すよ。》
だけど、見間違いではないみたい…。
しかも車??
昔はバイクだったのに…。
そう言えばバイクを買い換える時、社会人になったら車って言ってたな…。
《朝、9時頃行くよ。》
〈わかった。〉
《可愛いカッコでね…なんちゃって。》
"なんちゃって"…って聞くとやっぱり重樹なんだけど…。
少し違う。
昔はこんな事、絶対言わなかった。
〈はいはい。〉
《じゃ。》
断れず約束してしまったし…。
そもそも私…断る気、ないんだろうな。
どうしよう。
翔とは離れてしまうのに。
本当にこれでいいの?
そう思いながらも、嬉しくて…
夜はなかなか寝付けなかった。
その夜の夢はよく覚えてないけれど、シーラカンスが哀しい歌を唄っている気がした。