シーラカンスの唄
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鳴らない携帯を見て私は溜息を付いた。
正確に言えば鳴らないわけじゃない。
だけど。
翔へ送ったメールの返事は一向に来なかった。
(もう…ダメなんだろうな…。)
翔と離れて。
重樹ともう一度近付き始めて、初めて気付いた。
翔が大切だって事に。
翔じゃなきゃダメだって事に。
だけど、気付いた頃にはもう遅かった。
私はどこから見ても幸せだったのに。
誰から見ても幸せだったのに。
罰があたった…。
もう一度溜息を付いた時。
付けていた歌番組で、私と将が好きなアーティストが出て来た。
『それでは、SAD SONGさん達の"Coelacanth"です。』
「…………。」
思わず言葉をなくす。
シーラカンスは唄わない。
だけど。
シーラカンスの唄があった…。