シーラカンスの唄
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「早いな…。」
外に出ると本当に翔はそこに居た。
「あの…。」
言いたい事がたくさんあって…言葉に詰まる。
どう言葉にすればいいかも解らなかった。
「ちょっと歩こう。」
私の言葉を遮って、翔は笑顔を見せた。
いつも、笑顔なんて見せないのに。
二人で近所の公園を歩く。
夜だから子どもたちもいない。
真上で星が優しく光っていた。
二人で歩く。
それがこんなに幸せな事だって、前は知らなかった。
「あのさ…。」
それまで黙っていた翔がぽつんと話し始めた。
「ずっと考えてたんだ。」
「…何を?」
「いつ言い出そうかな…って。」
「?」
翔は一呼吸置いて、立ち止まって私を見た。
「嫁、来る?」