シーラカンスの唄
聴き間違いだと思った。
翔を怒らせて。
翔と連絡取れなくて。
今だって、振られるんだと思っていた。
だけど。
「朱香が嫌じゃなかったらだけど。」
翔はそう付け足した。
聴き間違いではない。
「怒ってないの…?」
「何を…?」
恐る恐る聴くと翔はきょとんとした顔をする。
「だって……。」
私はまた言葉に詰まる。
「ちょっと離れてて解ったんだ。朱香がどう思おうと、俺には朱香が必要なんだ。」
そんな私に、翔は照れくさそうにそう言って笑った。
"必要"
そう言われた事が嬉しくて、気付けば涙が頬を伝っていた。
「そんな事言ってもらう資格ない…。」
泣きながらそういうのが精一杯。
どうして翔はいつもそうなんだろう。
いつも大切な想いをくれるんだろう。
私に翔はもったいない…そう、思った。