シーラカンスの唄
*
(…なんか懐かしいな……。)
あの時はアイツの事、何も想ってなかったし。
その後起きる事も想像してなかった。
今まで忘れてたんだけどな…。
アイツに会わなくなって、もう4年…。
何処に居るのかも知らない。
生きているのかも解らない。
昔は気になっていたけど。
今はもう記憶の片隅にもなかった。
……はずだったのに。
シーラカンスのせいだ…。
一度、蓋を開けてしまえば記憶はカンタンに蘇ってしまう。
忘れた事も。
思い出したくない事さえも。
今はいらない記憶。
(…いいや。寝ちゃえ。)
時計も気付けば25時。
いつもなら被りもしない布団を、ごまかすように頭へ被せて。
明かりを消す。
聴きたくない声が届かないように。
これ以上、想い出さないように。
耳を塞いだ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
シーラカンスは深い海で唄う。
誰も知らない場所で。
誰にも教えられない気持ちを。
誰にも気付かれないように。
いつか伝わることを祈って…
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥