シーラカンスの唄
□■
(………やな夢。)
朝起きて思わず溜息をつく。
夢に見ないように…
布団をかけたのに、無駄だった。
早く忘れなきゃいけない。
それなのに…
夢の中の私は幸せだった。
─…♪─♪♪
ぼーっとしていると、早く起きたつもりだったのに気付けばいつもの時間。
《朱香、起きたか?おはよ。》
朝、必ず決まった時間に彼から一通のメールが入る。
〈翔、おはよ。〉
《昨日はごめん。今日はゆっくりできると思う。》
〈別にいいよ。仕方がないし。今日、待ってるね。〉
《ありがとう。仕事頑張れよ。行ってきます。》
〈翔もね。いってらっしゃい。〉
朝の挨拶から始まるそのメールは、付き合う前からの日課。
最初は少しめんどくさいと思ってたけど…
今はそれが¨当たり前¨になっていた。
(わ…。いけない!遅刻する!)
のんびりメールしていると、時計はすでに8時。
15分に出る電車は待って居てはくれない。
慌てて戸締まりをして、原付きに乗り、駅まで急ぐ。
きっと、この時の顔は人に見せられない。
何とか間に合い、電車に乗ってホッと息をついた。