私は塾の先生に恋をした。
夏の終わり


ある、夏休みの終わり頃。

「うう…、暑いぃ…」


ミンミンと鳴く蝉の鳴き声を背中で聞きながら、とぼとぼと田んぼ道を歩く。

田舎で何も無いくせに、夏になるとむしむし暑くなるから嫌になる。


「塾…行きたくないなあ…」

私は中学3年生、小崎葵。
つまり、受験生。

私が住んでいるこの小さな田舎町、向町。
ここには1つだけ小さな個人塾がある。

みんなは隣の市の塾に行ってしまうので、人数も少なく本当に小さい塾。

私はその塾に小学4年生から通っている。

何年も通っていて、塾の講師とは仲がいい。

だから、あまり塾に行きたくないなんて思ったこともなかったが、今日ばかりは思ってしまう。


「…クラス替えテストかあぁぁ」

こんな小さな個人塾でも、一応成績によって3クラスに分ける。
3年生の夏休みあけから、ずっとそのクラスになる。


「勉強してないよ…」


そんなことを言っても、返事をしてくれるのは、蝉だけだった。

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