私は塾の先生に恋をした。
夏の終わり
ある、夏休みの終わり頃。
「うう…、暑いぃ…」
ミンミンと鳴く蝉の鳴き声を背中で聞きながら、とぼとぼと田んぼ道を歩く。
田舎で何も無いくせに、夏になるとむしむし暑くなるから嫌になる。
「塾…行きたくないなあ…」
私は中学3年生、小崎葵。
つまり、受験生。
私が住んでいるこの小さな田舎町、向町。
ここには1つだけ小さな個人塾がある。
みんなは隣の市の塾に行ってしまうので、人数も少なく本当に小さい塾。
私はその塾に小学4年生から通っている。
何年も通っていて、塾の講師とは仲がいい。
だから、あまり塾に行きたくないなんて思ったこともなかったが、今日ばかりは思ってしまう。
「…クラス替えテストかあぁぁ」
こんな小さな個人塾でも、一応成績によって3クラスに分ける。
3年生の夏休みあけから、ずっとそのクラスになる。
「勉強してないよ…」
そんなことを言っても、返事をしてくれるのは、蝉だけだった。
< 1 / 10 >