『若恋』短編集1【完】
ふたりの花火
高校二年の花火大会。
「…奏さん!仁さん!榊さん!どこ?」
人混みの中、下駄を踏まれて転び、せっかく可愛く浴衣を着て帯を締めてお洒落をしてたのに、もう泣きたいくらいぐちゃぐちゃになっちゃってる。
「奏さん!榊さん!仁さん!どこ?みんなどこにいるの?」
花火大会に無理を言って連れてきてもらったのに、出店を覗いてはしゃいでいるうちにみんなとはぐれてしまった。
奏さんから貰った大事な携帯電話もさっきの転んだ拍子に、もうすでに落としてしまっている。
連絡も取れないし。
「どうしよう」
途方に暮れる。
奏さんたちと離れるって思ってなかったから人混みの中ひとりぼっちで心細くて、
ぐすん。
涙が滲んでくる。
はしゃいで走り回ってたのがバカみたいに思えてきて鼻の奥がツーンとする。
「あれ?誰かとはぐれちゃったの?」
柔らかい声に顔を上げると、やたらと格好いいひとが3人ガードレールに腰掛けこっちを向いていた。