『若恋』短編集1【完】




まっすぐに奏さんを見つめると微かに瞳が揺らいだ。


「家に帰って、奏さんの手当てしよ?」



わたしのことはいいから。

奏さんや仁さん、榊さんがわたしを見つけてくれた。

何もなかったんだからそれで…それでいいから。

だから、もういいから。


わたしのことなんかより、奏さんの傷の方が心配だから。



―――だから






奏さんの噛み締めたくちびるを指で拭って、奏さんのハンカチで覆われた手をギュッと握りしめた。



「もう帰ろう?奏さん」



転がってる人にも殴られた人にももう何もしなくていいよ。


「一緒に帰ろう?」





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