『若恋』短編集1【完】
「ありがとう奏さん」
奏さんの手に頬擦りをする。
「………」
ギュッ
奏さんが正面から包み込んでくれるように抱き締めてくれた。
「そうだな…帰ろうか」
「うん」
奏さんの匂いに包まれる中頷いた。
「帰ろうね、奏さん」
「…わかった」
「りおさん、下駄が」
「あ、」
押し倒された時にどこかに飛んでしまった。
「ありました。だけど鼻緒が切れて」
切れた鼻緒を見せて榊さんが苦笑いしてる。
どうしよう、下駄が。
迷ってたら奏さんがいきなりお姫様抱っこで掬い上げた。
ひゃっ!
「鼻緒が切れたら歩けないだろ」
「うん」
「だったら大人しくしとけ」
「でも、奏さん怪我して…」
「このぐらい大したことねえよ」
歩き出した瞬間に思い出したかのように奏さんが転がった3人を見下ろして言った。
「おまえら助かって運が良かったな」