『若恋』短編集1【完】
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家に戻ると、あまり清潔ではない白衣を着た成田先生がくわえタバコで待っていた。


「手、やっちまったんだって?」


わたしをそっと下ろして、痛みなんか感じてませんっていう顔で手を開いた。



「ま、こんなもんだろ」


成田先生も驚きもせずに治療を施す。



「じゃあな」

「え?もう帰るんですか?」

「俺はこれからデートなんだ。どっかの誰かさんが呼びつけたから仕方なく来てやったんだよ」


なんて片目でウインクして風のように去っていった。


「あれでも気を効かせてるんですよ」

「…榊さん」

「わたしたちも失礼します」

「若を頼むな」

「…仁さん」


ふたりも奏さんの指の状態を確認してからそれぞれ部屋へ戻って行った。




「りお、風呂に入ってこい。で、上がったら違う浴衣着ろ」

「うん」



奏さんが窓に腰かけて外を見ながら憂い顔をしてた。


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