『若恋』短編集1【完】
「奏さん、あの…」
「ん?」
振り向いた顔はどこか寂しげで。
「奏さん、あの。今日はごめんなさい…」
せっかくの花火大会を台無しにしちゃった上に、奏さんまで怪我をさせちゃった。
仁さんだって、榊さんだって必死で探してくれた。
もしもみんなが来てくれなかったらどうなっていたかわからない。
「ごめんなさい…」
真っ直ぐに奏さんを見ているうちに涙が込み上げてくる。
泣いちゃダメ。
泣いたら奏さんを困らせるだけなのに、周りが滲んで見えなくなるくらい込み上げてくる。
瞬きしたらきっと―――
「俺が悪かった」
滲んだ視界の中で奏さんが立ち上がりわたしのいる戸口のところまで来て頬を撫でた。
「怖い目に遭わせたな」
「…奏さんのせいじゃないから」
「怖かったろ?」
怖かったろ?
そう告げられた刹那、涙がポロリと奏さんの指に落ちた。