『若恋』短編集1【完】
――――――――
――――――
――――


シャワーを浴びて体に何の跡もないのを確かめて新しい浴衣を羽織った。


奏さんが誂えてくれた藍染めの浴衣に、髪を巻き上げてピンで留める。



一階のテラスから出て、奏さんが待ってるっていった中庭の中を歩いていく。

わたしが好きな白くて小さな花たちの中を下駄で歩いていく。



「奏さん?どこ?」



奥に進んで行くと中庭に佇んでる奏さんの姿があった。

奏さんもシャワーを浴びたのか前髪が濡れて雫が滴っている。

男浴衣を着て、腕組みして庭の池の方を見下ろしていた。



「奏さん?」


宵の口の中庭は虫の声で賑やかになっている。


「奏さん?」

「りお、静かにこっちに来てみな」


低い小さな声でわたしを手招きした。


???


包帯を巻いた左手を差しのべてそっとその手を取る。



< 20 / 44 >

この作品をシェア

pagetop