『若恋』短編集1【完】
「おまえに見せたいものがある」
「―――なに?」
「いいから来てみろ」
「???」
奏さんの側に立つと池の側に小さいけどシンプルな木箱が見えた。
「静かに見てろよ」
「うん」
奏さんがスッとしゃがみ小さな箱の蓋を開けた。
小さな箱から緑色のほのかな光がフワリと浮いた。
―――ホタル!
ほのかな緑色の光がゆっくりと点滅しながら宙に浮いていく。
近くの葉に止まり淡く光る。
奏さんの髪にも止まり、ホタルが奏さんの艶のある髪を照らす。
「りおに見せたかったんだ」
奏さんが真っ直ぐにわたしを見る。
憂いのある悲しげな瞳と、ホタルの舞い飛ぶ光。
その中で息もできないくらい感動してるわたしがいる。
「―――きれい」
「おまえに見せたかった」
「奏さんも…きれい」