『若恋』短編集1【完】
宵の口。
ふたりだけホタルの光に包まれている。
淡い光の中で奏さんがわたしを見てる。
「きれいだな」
え?
「その浴衣似合う」
奏さんが一瞬照れくさそうな顔をした。
「りお、」
「え?」
名前を呼ばれた瞬間に抱き締められた。
「…、奏さん…」
「悪りぃな、」
少しだけこのままで―――
奏さんの体が震えてる。
何かに怯えてる?
悲しんでる?
「奏さん?」
「………」
奏さんの小刻みに震える体を支える。
わたしにできるのはこのぐらいしかない。
「奏さん…」
「………」
「ありがとう…」
「………」
背伸びして奏さんの背中に腕を回して抱き締め返す。