『若恋』短編集1【完】
「りお、俺はな」
「え?」
「おまえが…」
奏さんが何かをいいかけて、
「…いや、なんでもない」
開いた口を閉ざした。
そして大きく息を吸う。
「ホタルきれいだな」
「うん」
「よかったな」
「うん」
奏さんの体が離れて、ホタルの群れに手を伸ばす。
「線香花火みたいだな」
「うん、きれいだね」
わたしも手を伸ばす。
ホタルが光を点滅させる。
「奏さん…ありがとう。わたし、この風景忘れないよ」
「ああ、」
「忘れないよ」