『若恋』短編集1【完】
ふたりの夏
高校二年夏休み。
「あぁ?プールに行くってか?」
口に挟んでたタバコをポロリと落としたのは奏さん。
「ふざけんな。なんかあったらどうすんだ」
眉を寄せてあからさまに不愉快な表情になった。
今までの機嫌の良さはどこへ行ったやら。
いつもならそこで引き下がるわたしも今日は負けない!
負けるわけにはいかない。
「せっかく、育子や樹たちが誘ってくれたんだもの行きたい!」
負けるもんか。
数少ない友達がせっかく誘ってくれてるんだし行きたい!
「…ケガだって完治してないだろ」
目を反らしわざとらしく開いた新聞に目を落とす。
「成田先生は転ばなければプールに入ってもいいって言ってたもん」
奏さんに詰め寄り下から覗き込むようにしてお願いすると、一瞬だけ目を上げた。
「成田が?」
「だから絶対行くもん」