『若恋』短編集1【完】
「ちっ、成田め、余計なことばっか言いやがって」
苦虫を噛み潰したような表情になり、後はわたしが、「絶対行く!」って、頑張るものだから奏さんは黙って無視を決め込んでしまった。
「わたし、今から水着買ってくるから」
「………」
「じゃあ、行ってくるね」
「………」
目もあげなかった奏さんが大きくため息をついた。
「ひとりで出歩くのは危ねえだろ。俺が運転してく」
立ち上がった奏さんに、わかってもらえたって嬉しくなる。
「ありがとう奏さん」
「…仕方ねえからな」
「転ばないように気をつけるから」
「あたりまえだ」
そっけなくしてるけど、奏さんはわたしに甘い。
ダメだ!って言っても、最終的にはわたしの話を聞いてくれる。
買い物行くにも護衛してくれる。