『若恋』短編集1【完】
「榊、今暇か?」
一階に下りてテラスを覗くと静かに本を読んでいる榊さんの姿があった。
「まあ、暇と言えば暇ですね」
「買い物行くんだが、ついてこれるか?」
榊さんは奏さんの後ろにいるわたしを見てにっこり笑ってくれた。
「若とりおさんが行くところならどこへだって行きますよ」
本にしおりを挟み立ち上がる。
「何を買いに行くんですか?」
「えっとね、水着なの」
「…水着、ですか?」
目を丸くして榊さんがわたしを見た。
「え?どうかしたの?」
何をそんなに驚いているのかよくわからない。
首を傾げると榊さんは奏さんに視線を移した。
「若、水着ですか?海にでも行くんですか?」
「違うよ、プールに誘われたの」
榊さんは奏さんに話しかけたのに思わず答えてしまった。
「…プール…ですか」