『若恋』短編集1【完】
「新しく出来た健康ランドに誘われたの。ウォータースライダーがあって楽しいんだって」
「………」
「それはよかったですね」
「うん」
奏さんは聞こえない振り。
榊さんは楽しそうですねって笑ってくれた。
奏さんと榊さんが連れて行ってくれた店っていつも高級で気軽に選べない。
「りおに露出が少ない水着を」
「えーっ、わたしビキニタイプにしようと思ってたのに」
いつもはわたしの好みの服を選ばせてくれるのに、今日は抗議しても素知らぬ振り。
「若、大人気ないですよ」
榊さんも奏さんの態度には苦笑した。
「ピンクの水着にしようかな」
「よせ。目立たない色にしろ」
「やだ。ピンクがかわいいよ」
「これにしろよ」
奏さんが初めて選んでくれたのは黒の生地に白の水玉のセパレートタイプのシンプルなもの。
「やだ!ピンクがいい!」