『若恋』短編集1【完】
「きゃあ!楽しい!」
「冷たーい!」
ウォータースライダーを滑り降りたら、カメラを構えたおじさんがいた。
「君、可愛いね。水着の写真を一枚…」
言いかけて近寄ってきたひとに、
「俺の連れになんか用か?」
奏さんがカメラを抱えた人の前に立ち塞がった。
「あの。その娘、可愛いかったから雑誌に写真を載せようかと思って」
おじさんは奏さんに凄まれてシドロモドロになってる。
「なんていう雑誌ですか?雑誌名聞かせてください」
榊さんも口調を厳しくして横からスッと出てきた。
「………」
目を泳がせて頻りに額に浮かんだ汗を拭う。
「答えられないような雑誌ですか?それともカメラマンて言うのは嘘ですか?」
「―――え?」
びっくり。
榊さんがそう切り出したってことなら、目の前のおじさんは偽物カメラマンなんだろう。