『若恋』短編集1【完】
「…奏さん、あ、ありがとう」
「………」
背中を向けたその横顔は明らかに怒ってる。
「…奏さん、ごめんなさい。ありがとう」
テーブルに向かって歩いていく奏さんの背中にお礼を言った。
「…だから、ひとりにさせとくのは不安なんだ」
「え?」
「…誰かがいつもおまえを見てる」
「なに?」
「いや、何でもない。
変なヤツがいたなって思ったらすぐに逃げてこい。いいな」
奏さんが濡れた髪を撫でてくれた。
もう怒っていた表情は消えていた。
「ありがとう奏さん」